今回は洋食店用のHACCPについて、「衛生管理」「食中毒」をポイントについてお話します。
目次
■作り置きに要注意!
洋食店は煮込み料理やお肉料理が多く、注意すべき危険がたくさんです。食品を扱う際、危険温度帯(10~60度)を避けるように管理することがHACCPの考え方にある重要ポイントです。温度帯ごとにグループを分けて管理する必要があります。メニューのグループ分けとルールの例に出しますので参考にしてください。
・グループ1: 冷蔵品を冷たいまま提供する
カット野菜、ねぎ、大根おろし、カットレモン、カットフルーツ、ミント、生クリームなど
【ルール】
- 冷蔵庫から取り出したらすぐに盛り付けて提供する。
- 生野菜はよく洗浄殺菌して保存する。
・グループ2:加熱後提供する、加熱後温存保存して提供する
ハンバーグ、ステーキ、フライ、ソーセージ、チキングリル、パスタ、スープ、ライス、パン、ゆで野菜、グリル野菜、フレンチトースト、パンケーキ、ピザ、グラタンなど
【ルール】
- しっかりと規定の加熱時間を守る。
- 肉などは中心まで火が通るように時間と温度を決める。
- 加熱後はすぐに提供する。
- 保温は65度を下回らないように保管する。
・グループ3:加熱と冷却を繰り返す
パテ、煮込み料理、ソース、たれ、温泉卵、プリン、焼き菓子、ポテトサラダなど
【ルール】
- 加熱調理後はすぐに清潔な容器に小分けにして冷却する。
- 再加熱する際は中心まで、十分に加熱・沸騰させる。
- トッピングに用いられる食材は常温で出したままにせず、冷蔵保存し直前で盛り付ける。
・グループ0:常温保存の食品
クルトン、調味料(塩・胡椒・粉糖など)、コーンフレーク
【ルール】
- 封をして害虫・害獣の危害の無い場所に保管する。
- 容器の中身には直接手で触れない。
■洋食店で特に注意すべき食中毒
特に注意すべきはグループ3の加熱と冷却を繰り返す料理です。具材をたっぷり入れたスープや煮込み料理などは出来立てなら問題ありませんが、仕込んで保管するような場合、すぐに温度を下げないと細菌が増えます。理想は30分以内に20度以下に冷ますことです。以下注意すべき食中毒菌をまとめます。
・ウェルシュ菌
ウェルシュ菌は特にカレーやシチューなどの煮込み料繁殖しやすい菌です。加熱しても芽胞が残るため、温度が下がり45度前後で最も増殖します。
(芽胞・・・耐久性が高く、長時間の加熱にも耐えることができる)
【対策】
- 常温での放置しないこと
- 10度以下で保存すること
- 再加熱する際はよく沸騰させることと、よく混ぜること
・カンピロバクター
鶏肉等に存在する細菌です。
【対策】
- 中心温度75度で1分以上加熱をしっかり行うこと
- まな板、包丁の使い分けや洗浄、手洗いの徹底など二次汚染に注意すること
・ノロウィルス
牡蠣などが原因になる事でも知られていますが、人から人への感染も危険度が高いです。一人でも発症者がいる場合、トイレからの二次汚染により従業員同士で感染が広がり、食品への汚染が起きることもあります。食中毒が起きた時に被害が大きくなる可能性が高く、1件の発生に対し平均して30人の被害がでています。
- 85度で1分以上の加熱すること
- まずは従業員からの二次汚染を防止すること
- 流行期11~3月は従業員に牡蠣の生食を禁止する事や近親者にの感染者が出た場合は休ませるなどのルールを決めること
■大惨事!洋食店での食中毒事故例
実際に起きた洋食店での食中毒事故をご紹介します。
事故例
令和2年2月、都内の飲食店がケータリングでビュッフェ形式の提供後、喫食した266名中184名が下痢や腹痛の不調を訴えました。
提供中に異変を感じ従業員が撤去したチキンの煮込みからはウェルシュ菌が検出され、患者5名からもウェルシュ菌が検出されました。
チキンの煮込みは調理後、計8時間以上常温放置されたのちに提供されていたことが分かりました。
原因はウェルシュ菌と断定され同店は3日間の営業停止処分を受けました。
ウェルシュ菌食中毒の多くが常温で料理を放置していたことによる菌の増殖によります。
特にビュッフェでは大量の調理が行われるため、冷却が難しい場面もあるでしょう。
・徹底しよう!加熱・低温管理
「火にかけたから安心」ではないのです。
冷却前の加熱では中心までしっかりと加熱させることが重要です。冷蔵庫のスペース、台数の問題で冷却が難しい場合もあると思いますが、保存時は小分け、氷や保冷剤を使うなどの工夫をし、できるだけ早く冷却しましょう。理想は30分以内に中心温度を20度以下(60分以内に中心温度を10度以下)です。
加熱と低温管理を徹底して、食中毒事故を防ぎ安心で信頼できる洋食店を目指しませんか?