ここでは皆さんが疑問に思うHACCPについて、わかりやすく解説していきます。業種・業態ごとに様々な対応方法がありますが、まずここではHACCPという考え方について、体系的に説明をしていきます。
目次
■1.HACCP義務化
HACCPとは、Hazard Analysis Critical Control Pointのそれぞれ頭文字をとったものです。危害要因分析(Hazard Analysis)・重要管理点方式(Critical Control Point)と訳されます。簡単に言えば、食品製造プロセスに潜む食中毒菌などのハザードを見つけ、危険度の高いハザードを確実に制御する方法を決めて、管理することです。
日本では、製造・加工、調理、販売等を行う全ての食品等事業者を対象に2020年6月から義務化(完全施行2021年6月)となりました。
■2.HACCP義務化でやらなければならないこと
HACCP義務化でやならければいけないことは、大きく2つ。
- 1つ目は、一般衛生管理の実施。
- 2つ目は、HACCPシステムの実施。
それでは、この2つについて順番に解説していきます。
一般衛生管理とは?
一般衛生管理とは、食品を取り扱う上での基本作業です。どのような食品でも、やるべきことが決まっています。
7つの項目を押さえましょう!!
- 施設の衛生管理
- 設備等の衛生管理
- そ族および昆虫の対策
- 廃棄物および排水の取扱い
- 食品等の取扱い
- 使用水の衛生管理
- 従業員の衛生管理
あと、これらの実施に伴う「従業員教育」と「記録の維持」が必要となります。
これらの7項目を、さらに具体的に見てみましょう。HACCPシステムには、7原則12手順と言われるものがあり、基本この手順に沿って実施します。
- 床、壁、天井、照明器具、窓、トイレ等の清掃洗浄および殺菌消毒のルール作りと実施。
- 製造・加工機器や器具の清掃洗浄および殺菌消毒のルール作りと実施。
- ネズミや昆虫、クモ類の侵入対策や駆除のためのルール作りと実施。
- ゴミの廃棄・搬出ルール、グリストラップ含めた排水の処理ルール作りと実施。
- 原料・材料、資材、仕掛品や最終製品の受入れ、保管、前処理、調理、盛り付け、配送における手順と交差汚染防止のためのルール作りと実施。
- 使用水の管理ルール作りと実施。水道法に沿った上水・井水および貯水槽管理や水質管理。
- 外来者含めた従業員の衛生ルール作りと実施。手洗い、服装、健康管理、検便など。
■あなたが具体的に作成する書類は4つだけ。
具体的に作成しなければならない書類は、以下の4種類があります。
- 製品説明書:製品の原材料、アレルゲン、期限、保管方法、喫食対象などを規定した文書
- 製造工程一覧図(フローダイアグラム):製造・加工の一連の流れを樹形図にした文書
- 危害要因分析表:危害要因(ハザード)を工程毎に明確にし、分析評価し、重要管理点を決定した文書
- HACCPプラン:重要管理点の管理方法を規定した文書
前述の一般衛生管理もHACCPシステムも、初めて取り組む組織には 「難しい」とよく言われます。そのため、厚生労働省はホームページ上で、各業界団体から手引書などを公表しています。
さらに、小規模事業者や一般衛生管理の対応で管理が可能な業種などは、 HACCPシステムが簡略化され、業界団体が作成する手引書をそのまま採用することで 、営業者自らが構築・作成しなくても済むように配慮されています。つまり自分たちで危害要因分析(HA)をしないでも良いのです。
・しかし、一定規模以上の事業の場合には…
一定規模の食品製造業(従業員50人以上、※政省令発行後に正式決定)は、 コーデックスHACCP7原則12手順に沿った、より高度なHACCPシステムが求められます。
これら一般衛生管理やHACCP関連書類は、営業許可の申請および更新時の提出書類として必要になり、また、保健所の監視指導時に提出・開示を求められます。
HACCP認証はどうやって取れる?
保健所に提出して受理されたHACCPシステムだからと言って、国・自治体からHACCP認証を受けたということではありません。
そもそも、HACCPは義務であり、やっていて当たり前のもの。法律を守っていること=当たり前のことに、国はわざわざ認証マークなど出しません。HACCPは誰に認められなくても、実施すべきことなのです。
しかし、まだ多くの企業がHACCPの対応については、甘い状態が続いており、他企業との差別化を行いさらなる安心をお取引企業に約束するために、HACCPの取り組みを外部に発信することは、経営戦略上、有益だと言えるでしょう。
■3.そもそも何のためのHACCP義務化か?
「食中毒防止」です。
組織の存続に重大な危害を与える食中毒事件は、何としても阻止しなければなりません。PL保険や製品回収保険など、万が一の対策は必要ですが、まずは食中毒を出さないことが第一です。
■御社のHACCP対策はいかがですか?
組織規模に限らず、御社も食中毒防止に取り組みませんか?HACCPを取り入れても、本質的に理解し、実践していかなければHACCPシステムはあっという間に形骸化します。厚生労働省ホームページの、HACCP入門のための手引書には、次のように書かれています。
「HACCPを運用するうえで製品が正しく作られているか、消費・賞味期限は守られているか、製造する環境や機器類がきれいで清潔かなど、検査を行って確認することがあります」例として、「製品検査」や「拭き取り検査」が挙げられており、最終製品や設備機器・器具類の細菌検査を求めています。
これら細菌検査により見えない細菌を「見える化」して、一般衛生管理やHACCPシステムの脆弱な部分を見つけ確実に食中毒防止の対策を練ることが可能となります。どうせやらなければならないHACCPであれば、意味のあるHACCPに取り組みませんか?