・「食中毒といえば魚介類、生肉が危険だ!」
というイメージがありますが、牛肉、馬肉、鶏肉は中心がレアでも食べることがあるのに、なぜ豚肉は生で食べてはいけないの?と感じることはないですか?
豚肉と鶏肉はしっかり火を通すように教育されてきた家庭も少なくないと思います。
今回はその豚肉について、お話をしていきます。
目次
■実はどの肉にも細菌は存在している
・と殺・解体時に肉表面が汚染されるため
どんなに気をつけても、と殺・解体時に汚染されてしまいます。
※「と殺」・・・家畜など動物を食肉・皮革などにするため殺すこと。
・牛肉のレアはいいの?
「え!牛肉レアで食べたことあるけど…」
そう思った方、安心してください!
牛肉は表面についた細菌で肉中心部まで汚染されることはほとんどないため、ステーキ等で表面を加熱し中身がレアな状態でも食用にできます。
ただしサイコロステーキなどたれに長時間付け込んだ肉やハンバーグなどは中心部まで加熱が必要です。
・馬刺しは生だけど大丈夫
馬肉は他の家畜と比べ菌が繁殖しにくいことに加え、菌が検出されないことなどの基準をクリアしているものが生食用に販売されています。
・鶏肉は基本的にNG
鶏肉もほんの一部生食用の流通がありますが、一般的に流通している鶏肉は生食できません。
加熱をした場合でもカンピロバクターでの食中毒が多く報告されており、場合によってはギランバレー症候群という四肢の麻痺など日常生活に支障が出るような後遺症を残す可能性があります。
これらに比較して豚肉の注意点をまとめました。
■なぜ豚肉は生で食べてはいけないのか
・E型肝炎ウィルス 対策は?
豚はE型肝炎ウィルスに感染している可能性があります。
【特徴】
- 豚・イノシシ・シカに感染しているもので、牛や鶏にはない
- 国内の豚は約7割がE型肝炎ウィルスを持っていたデータあり
- 人のE型肝炎ウィルスの発症例のうち約35%は豚肉が原因
- 内臓(特にレバー)に多くあり、感染している豚肉は生で食べることで人への感染が起きる
【対策】
- 63度で30分以上または、中心部までしっかり火が通す
・細菌対策は?
細菌に関しては豚肉に限らず注意が必要です。カンピロバクター、サルモネラ菌などが主な食中毒菌であげられます。
【対策】
- 加熱での殺菌が基本で、中心温度を75度以上で1分以上加熱
・寄生虫も怖い。対策は?
現在、国内産の獣畜は畜場法に基づき検査が行われ、寄生虫病の判明がされた食肉は廃棄措置されています。寄生虫の感染自体も農場の衛生管理の徹底により、かなり少なくなってきています。
【対策】
- 死滅させるには冷凍・加熱処理が有効
- 中心部までの加熱で寄生虫の心配はなくなる
これらの危険を踏まえたうえで規格基準が設けられています。
■豚肉の取り扱いの決まり
規格基準(平成27年)
・豚の食肉は、飲食に供する際に加熱を要するものとして販売の用に供さなければならないこと。
・販売者は、直接一般消費者に販売する事を目的に、豚の食肉を使用して、食品を製造、加工又は調理する場合には、中心部を63度で30分間以上の加熱又はそれと同等以上の殺菌効果のある加熱殺菌が必要であること。
つまりは豚肉は加熱しなくてはいけないのです!
・違反すると罰則あり!
- 規格基準は、食品衛生法第11条に基づき設定するものであり、同法においては、規格基準に違反した場合の罰則として、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金が定められている。
■勘違いされやすいこと
・SPF豚・無菌豚だから生で大丈夫!?
「無菌豚ってなに?」
- 特定の病原体の無い豚肉の事で、と殺・解体してしまえば一般の食肉と同じ
- 健康的な豚というもので、そもそも食肉を無菌で管理することはほぼ不可能
- 流通する用の豚肉ではなく、帝王切開で生まれ無菌の餌や無菌の水など特定の環境で育てられ、試験動物にされる豚
なので「この豚肉はSPF豚で無菌だから生で食べられる!」ということはありません。
飲食店でもとんかつをレアな状態で提供するところも見受けられますが、生食の提供は法律で禁止されています。
・生ハムはいいの?
「生ハムは豚だけど生で食べてる…?」
豚の生食が禁止されていますが、それでは生ハムは大丈夫なのでしょうか。
生ハムを生で食べれる理由は加工の工程にある!
生ハムは塩分を強くして塩漬けにすることで殺菌処理しており、さらに数か月~数年長期熟成させて乾燥させ、その過程で菌を死滅させているため細菌の増殖はほぼないと判定できる基準にがあります。
■ポイントを押さえて豚肉をおいしく食べよう!
豚肉の生食は禁止されています。たとえ、肉の塊の外側をトリミングしたとしても菌やウィルスが中心にない可能性は否定できませんが、過度に豚肉を恐れる必要はありません。
- 63度で30分と同等の加熱殺菌をおこなう
- 中心部までしっかりと加熱を意識する