Withコロナ時代の飲食店の衛生管理 – みんなのHACCP
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Withコロナ時代の飲食店の衛生管理

1.新型コロナの感染拡大

4月7日に政府は、東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象に5月6日までの緊急事態宣言を発令しました。4月16日には対象を全都道府県に拡大し、全国民及び全事業所において不要不急の外出自粛や営業自粛・休業を余儀なくされました。

5月4日、政府は緊急事態宣言の対象地域を全国としたまま5月31日まで延長することを発表し、5月14日には、次の3つの解除基準を設けました。

1-1.新規感染者数

1週間で10万人あたり0.5人未満程度であり、直近の1週間での感染者数が前週よりも少ないこと。

1-2.医療提供体制

重症者が減少傾向であり、医療体制がひっ迫していないこと。

1-3.検査体制構築

PCR検査など検査システムの確立。

これらを総合的に判断し、「特定警戒都道府県」のうち茨城、岐阜、愛知、石川、福岡の5県とそのほかを合わせた39県について、一斉解除を表明しました。更に特定警戒都道府県についても5月21日に改めて解除の可否を判断する見通しであり、感染予防策を徹底しつつ、社会経済活動を本格的に再開させることを目論んでいます。

2.飲食店の生き残り策

4~6月期実質GDP成長率(前期比年率)は、マイナス25%というデータが出されています(ゴールドマン・サックス証券、4月7日)。これはデータを取り始めて以来最大の落ち込みとされており、日本経済がリーマンショックを超える危機的状況に陥っていることを意味しています。

このような状況の中、飲食店、居酒屋、ファミレスをはじめとする外食産業は、これまでにない生き残り策を講じ、活用できるものは活用しなければなりません。

飲食店における各種対応例

資金・・・無利子無担保融資、政府や自治体の支援策、クラウドファンディングなど

売上・・・テイクアウト・デリバリー、ECサイトへの掲載、のぼり・POP支援策、飲食料金の先払い制度や定額サービス(サブスクリプション)、期間限定サービス、新メニュー開発、移動販売など

運営・・・消毒剤・マスク・手袋などの消耗品調達、従業員の健康管理、ヒト・モノの洗浄・消毒徹底、非接触型提供、キャッシュレス、換気の徹底、席数の削減や入店客数制限、デリバリー支援、ボランティア人材など

ICTを活用し、広告宣伝、外部販売網の活用(リアルとネット)、売り上げ回復策などに知恵を絞り、政府の様々な支援策も活用して、出来ることは全てやる覚悟で経営者は臨まなければなりません。しかしながら、このタイミングで食中毒を出してしまっては、なんとか生き残れる可能性が、完全に閉ざされてしまいます。

3.飲食店の衛生管理

東京を含む特定警戒都道府県は、5月14日時点ではまだ営業自粛や休業要請が継続していますが、多くの飲食店は営業を再開し、一部店舗では深夜まで営業を行っています。このまま営業自粛や休業を続けていれば、新型コロナ感染症による死者より、経済悪化に伴う自殺者の方が深刻化しかねません。

新型コロナ感染症と経済活動を両立させ、飲食店は生き残りのために営業を再開しなければなりません。経営が傾いているこの時期に、絶対に食中毒は出したくありません。新型コロナを理由に衛生管理の手抜きは許されることはないでしょう。おそらく全ての都道府県で緊急事態宣言が解除される6月は、ちょうど改正食品衛生法によるHACCP義務化の施行期日でもあります。

飲食店の営業再開に向けて、気を付けたいことを3つ挙げます。

  1. 食中毒、提供する料理内容と店舗の衛生
  2. 新型コロナの感染予防
  3. 法令違反

これら3つについて、飲食店は十分に気を付けて営業再開の準備を進めて下さい。

次にこれらについてもう少し説明します。

4.食中毒、提供する料理内容と店舗の衛生

まず、食中毒です。

これは当然ながら通常時から気を付けていることですが、これまでやっていなかったテイクアウトやデリバリーを緊急的に実施している店舗では、慣れていない分、より注意が必要です。提供後すぐに食べ始める店舗営業とは違い、弁当の場合は持ち帰り時間があり、且つ比較的暖かい食材が入っており、更に数を売るために、多くの弁当を調理し盛り込んで、常温で陳列・販売していることがあります。温度管理が徹底されたコンビニのショーケース内と違い、盛り込む食材に気を付けてメニューを考えないと、細菌が繁殖しやすくなります。

4-1.提供時の注意事項

①保管・販売時の温度管理

細菌は20℃から50℃の間で増殖しやすくなります。保管・販売時の温度は、10℃以下または65℃以上が望ましいです。

②移動・配送時の温度管理

テイクアウトに保冷剤を付けたり、デリバリーでは保温ボックスに入れるなどして、低温管理に努めましょう。

③注意事項の表示・伝達

アレルギー表示や消費期限表示をすることで注意を促すことや、「加熱してお召し上がり下さい」や「すぐにお召し上がり下さい」などの声掛けは、食中毒および食品事故の予防になります。

4-2.提供する料理内容で注意しなければならない食材

①生ものを避ける

生野菜やフルーツ、特に刺身や生肉は絶対NGです。大腸菌や腸炎ビブリオが怖いです。野菜や肉・魚は加熱料理で提供しましょう。

〆鯖など酢で締めている料理も安心はできません。毎年アニサキス食中毒が多発しています。野菜が欲しい場合は、ヘタを取ってよく洗ったプチトマトならOKです。カットフルーツは保冷できる専用ボックスで提供しましょう。

②水分の多い食材を避ける

煮物は、煮詰めて水分を減らす、味付けを濃くするなど工夫が必要です。ポテトサラダは、水分の多いキュウリが入っており、ポテトのデンプン質は細菌の栄養源です。マヨネーズが入ると、野菜の水分が出て腐りやすくなります。

③玉子料理を避ける

だし巻き玉子は、サルモネラが怖いです。中心までしっかり加熱しましょう。

④乳製品を避ける

チーズやクリームなど乳製品は、腐りやすい食材です。

⑤チャーハンや炊き込みご飯などは避ける

具材が多いことで細菌混入または増殖の要因になります。慎重な対応が必要です。

4-3.店舗の衛生

食中毒を出さないために、休業からの営業再開時は、店舗・設備の点検、清掃・洗浄・消毒作業を徹底して下さい。

しばらく休業していた場合、使っていなくても設備機器は汚れます。ネズミや昆虫類の発生や汚染も考えられます。再開前に調理設備・器具類、食器・カトラリー類、作業台、客席など、店全体の徹底した点検、清掃・洗浄・消毒が必要です。

また、保管していた食材の点検も重要です。劣化や腐敗はしていないか、賞味期限切れは無いか、虫の付着など無いかなど、確認が必要です。

更に、空調、給排水設備および電気設備なども点検しましょう。カビの発生や通電時の火災も心配です。

5.新型コロナの感染予防

次に、新型コロナの感染予防です。

これはお客様への感染も、従業員への感染も厳重に注意を払い予防しなければなりません。営業再開して早々に、クラスター発生源にでもなれば、批判や風評被害が予想され、最悪閉店を余儀なくされるでしょう。

まずはお客様に安心して御来店いただき、従業員も安心して仕事に従事するために、営業が再開され始めるこの5月から、国や自治体が発行する感染防止マニュアルなども参考にして、次のような対策を始めると良いです。

①開いていることをアピール。

店頭表示またはドアを開放して、入り易さを演出しましょう。4月多くの店舗が閉まっていて当たり前だったので、そもそも空いていることに気付かない可能性があります。

②消毒作業をお客様に見えるように実施し、安心と信頼を得る。

店頭へのアルコール設置や、キッチン内の調理器具や容器・皿類の消毒や、トイレの消毒はもちろん、タッチパネル式の順番待ち機やオーダー機、着席前の椅子・テーブル、卓上の調味料やカトラリー類の消毒、お金を扱った後、調理人やホール員、テイクアウトやデリバリー時の店員さんの手袋着用とその上からの消毒など、お客様から見える位置・タイミングで消毒作業を行うことが重要です。

これらの作業は、細菌やウイルスを殺菌し、食中毒の予防効果があるのと同時に、お客様からの信頼につながります。安心できるのでまた来店したいと思わせることができます。

多くの消費者が、メディアから新型コロナ感染について情報を入手しています。手袋着用やアルコール消毒の不徹底は、店への信頼を失います。しばらくは必要以上の対応が求められます。

③オーダーの自動化、キャッシュレス化の推進。

なるべく人との接触、密接を避けることが重要です。当然ながら、店員はマスクを着用していますが、入店時やオーダー時の声掛けに不安を感じる顧客層が一定数あると考えます。店舗でのオーダーであれば消毒されたタッチパネルからオーダーでき、テイクアウトやデリバリーであれば自分のスマホからオーダーが出来れば、不安を感じるお客様にも安心を与えることができます。

いまはキャッシュレス決済が簡単に導入できる時代です。不特定多数の触った硬貨や紙幣は汚染されます。会計場所にQRコードを設置することや、事前にキャッシュレス決済をできるようにすることが、お客様の心理的負担を軽減させます。

④お客様のご協力、3密防止。

外での順番待ち、入店人数制限や席数の削減、座ってほしくない場所への×印(両隣と対面を空ける)、支払い順番待ちの立ち位置の印など、お客様間の距離を空けるようお客様に協力を依頼することが重要です。(密集防止)

1グループ当たりの時間制限や、声が大きい場合や大騒ぎしている場合の店側からの注意、大皿料理やビュッフェ形式の廃止などは、お客様間での飛沫感染・接触感染を極力避けられます。(密接防止)

換気の徹底が重要ですが、これから暑くなることを考えると、単に窓や扉を開放しておけば良いということにはなりません。お客様にも多少は我慢してもらいますが、暑過ぎるとクレームになります。網戸や遮熱窓ガラスの設置、窓や扉を締め切った場合でも、エアフィルターを通して外気を取り入れ排気することでも換気になります。(密閉防止)

⑤従業員の健康管理。

もともと人手不足でギリギリで運営していたと思います。6月以降の反動消費を考えると、忙しい時にもう従業員は全員辞めましたでは、売上が回復することは不可能です。雇用調整助成金など活用しつつ、今いる従業員の健康管理が重要です。嘔吐、下痢、発熱、不眠など体調不良者がいないか出勤時に確認し、必要であれば病院を受診させなければなりません。これは従業員を守るのと同時に、お客様を守ることになります。

6.法令違反

最後は、法令違反です。

飲食店営業許可の取得・更新時と、現在の状況は異なります。今までやっていなかったテイクアウトやデリバリー、自動車で移動販売を始めたという飲食店も少なくないと思います。

現在は緊急事態なので、保健所もうるさくは言ってこないと思いますが、食中毒が発生すれば、否応なしに注目され、法令違反を指摘されることも想定しなければなりません。

基本的な法令と遵守すべきことを確認しましょう。

①食品衛生法(6月1日改正法施行)

第54条(営業施設の基準)

都道府県は、公衆衛生に与える影響が著しい営業であって、政令で定めるものの施設につき、厚生労働省令で定める基準を参酌して、条例で、公衆衛生の見地から必要な基準を定めなければならない。

第55条(営業の許可)

前条に規定する営業を営もうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。

食品衛生法施行令で定める営業許可が必要な業種は、34業種あります。そのうちの一つが飲食店営業です。

②飲食店営業とは

一般食堂、料理店、すし屋、そば屋、旅館、仕出し屋、弁当屋、レストラン、カフェー、バー、キャバレーその他食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業のことを指します。ちなみに、喫茶店は、喫茶店、サロンその他設備を設けて酒類以外の飲物又は茶菓を客に飲食させる営業と定義されています。

飲食店とは、弁当屋も含め同じ営業許可になり、基本的に飲食店営業許可を持っていれば、弁当の販売も出来ます。ただ、飲食店営業許可の申請時、それを現地確認する保健所の見解が地域によって様々あり、チェーン展開している飲食店では、その見解の地域差によく苦労すると聞きます。悩むよりも、まず所轄の保健所に実情を話して、保健所の見解を確認しましょう。それに従う限りは、コンプライアンス上の問題は無いと考えても差し支えありません。

③地域による差に注意

飲食店営業許可を持っていても、扱っている食品によって、他の営業許可を重複して要求する保健所があります。厚生労働省のホームページ上の会議資料にその事例が紹介されています。(営業許可業種見直しの論点・案 資料2他)

  • テイクアウトする場合に、そうざい製造業の許可取得を求められる。
  • 店内でケーキにトッピングなどの盛り付け工程がある場合に菓子製造業の許可取得を求められる
  • 食肉が50%以上含まれる肉団子を販売(テイクアウト)する場合、そうざい製造業の他に食肉製品製造業の許可取得を求められる。
  • 飲食店営業に加え、菓子製造業、アイスクリーム類製造業等の許可取得を求められる。
  • デリバリーをする場合に、都道府県等によっては、飲食店営業の施設に加え、詰め合わせ包装をする場所、施設を新設するよう指導がある。
  • セルフサービスのコーヒー調理器を設置する場合にも、喫茶店営業の施設基準への適合が求められる。

飲食店営業許可を持った飲食店でも、そうざい製造業、菓子製造業、食肉製品製造業、アイスクリーム類製造業、喫茶店営業が追加で求められ、更にテイクアウトやデリバリーなどを始めると、食肉販売業、魚介類販売業、乳類販売業が求められる可能性があります。

更に、国が制定した食品衛生法施行令による営業許可34業種以外に、自治体が制定する条例許可業種というものがあり、魚介類加工業、食料品等販売業、菓子類販売業、そうざい類販売業のような営業許可が、複数の自治体で定められています。

具体的な事例

自家製のハム・ソーセージ・ベーコン・パテ・ローストビーフ・チャーシューなどは、食肉製品製造業が必要、鮮魚の刺身は魚介類加工業が必要、仕入れた牛乳、生肉、鮮魚介類を店舗で調理、提供しないでそのまま販売すると、乳類販売業、食肉販売業、魚介類販売業がそれぞれ必要になります。

また、仕入れたお酒(日本酒やワイン)も店舗で提供しないでそのまま販売すると、酒税法に基づく酒類の販売業が必要になります。これは保健所ではなく、所轄の税務署になります。

④法令違反しないために

一番確実なのは、最寄りの保健所に確認することです。

先程も述べましたが、地域によって営業許可業種の解釈が違う上、条例許可業種もありますので、ここで述べたことが絶対ではありません。更にいまは新型コロナ感染症に伴う緊急事態ですので、保健所もPCR検査などの対応で手が回りません。テイクアウトやデリバリーは一時的な対応であり、既存顧客の維持と新規顧客の開拓をしつつ、本格的な営業再開を見込んだ店舗の衛生管理や資金調達、来店いただく際の新型コロナ感染予防をしっかり準備するべきです。

なお酒類のテイクアウトに関しては、4月9日に国税庁酒税課から、免許付与から6か月間の期限付きで酒類の販売業免許を受けることが可能となりました。ただし、6月30日までの免許申請に限りますが、このような緊急的な規制緩和もあります。

また、先程述べた営業許可業種も来年6月からは大幅に変わります。

改正食品衛生法の6月からの施行(HACCP義務化)に合わせ、来年6月から新しい営業許可届出制度が施行されます。喫茶店営業が飲食店営業に統合されること、現在許可業種の乳類販売業が届出業種に移行されること、漬物製造業が許可業種として新設されること、その他食品取扱業者が届出業種になるなど、大幅に再編されます。1つの営業許可で取り扱える食品の範囲が拡大され、これまでのように複数の営業許可を求めるのではなく、営業形態に最も適切な許可を取得する「1施設1許可」が原則となります。

このように、営業許可業種・届出業種が再編されるとは言え、施行は来年6月からです。いま行っているテイクアウトやデリバリーは現行法に従います。繰り返しになりますが、テイクアウトやデリバリーを行っている飲食店は、絶対に食中毒を出さないために、弁当の衛生管理の徹底と、本格的な営業再開を見込んだ店舗の衛生管理、資金調達、新型コロナ感染予防を行って参りましょう。

この記事を書いた人

株式会社フィールズコンサルティング 柏原 吉晴

株式会社フィールズコンサルティング 柏原 吉晴

㈱フィールズコンサルティング 取締役(農学修士、MBA)
FSMS/ 経営支援のコンサルティング実績 300社以上
食品関連会社専門のコンサルティングファームとして、
FSMSを中心に、経営支援を行う。他にも講演や執筆活動も行う。
https://food-haccp.jp

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