今後の取組み(飲食店編) – みんなのHACCP
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今後の取組み(飲食店編)

1.飲食店は危険!?

厚生労働省が公表している食中毒統計データを見ると、
2018年は、食中毒事件数1330件のうち、飲食店が原因施設と判明した事件数が722件で、
全体の54.3%と、12.3%の家庭を押さえて断トツの1位です。
また、患者数でも17,282人のうち、飲食店が8,580人で、
全体の49.6%と、15.5%の仕出屋を押さえて断トツの1位です。
これらの発生傾向は毎年続いています。

一方、食品製造所が原因施設と判明した食中毒事件数が11件で、全体の0.8%、
また、患者数は345人で、全体の2%となっています。

平成28年の食料品製造業における製造品出荷額等(酒類・飲料含む)は、
経済産業省「工業統計(平成 29 年確報 産業別統計表)」によれば、34兆7千億円で、
一方、平成29 年の外食産業の市場規模は、公益財団法人食の安全・安心財団
「外食産業市場規模推計」によれば、25兆7千億円です。
一概に比較できませんが、売上に対しての食中毒発生リスクが、
食料品製造業に比べ、外食(飲食店)がかなり高いことが分かります。
飲食店は収益性が低く、食中毒が発生した際のコストが吸収できないことを示唆します。
また、食料品製造業は、衛生管理にコストをかけて安全・安心な食品を提供しますが、
飲食店は、衛生管理にコストをかけず、結果的に危ない食品を提供し、食中毒を発生させ、
自ら経営を傾かせているとも言えます。

2.食料品製造業と飲食店の違いは?

「意識の違い」

日々多くの食料品製造や飲食店営業の現場を見て感じるのは、意識の違いです。
特に、食品衛生・食品安全にかかる意識の違いです。
結果、かけるコストも組織構成にも違いが出て、
前述のような食中毒事故の発生件数の違いになっていると考えます。
あくまでも個人の経験的見解ですが、例えば、アルバイト・パート含め、
従業員数が20~30名の食品工場では、1~2名の品質管理担当者がいますが、
同じ規模で飲食店では、品質管理担当者と言える方が、ほぼいません。
飲食店の皆様は、毎年の食中毒発生傾向をみて、自分たちのリスクの高さ、
意識の低さに気付かなければなりません。

実は、食料品製造の場合は、流通小売りからの食品安全要求がそもそも高くて、
長年鍛えられて、結果、食品安全に対する意識が高くなったという側面があります。
一般的に、流通小売りの品質管理担当者は、新規の取引先メーカーに対して監査を行い、
自社の取引条件を満たす衛生管理レベルを要求します。

飲食店の顧客は一般消費者であり、継続的な契約関係に無いこと、
消費者の意識は移ろいやすく、看板を替えた新しい飲食店に惹かれ、
また、消費者は厨房の中を直接見る機会がないので、
食品安全衛生に対する外的要求としては、実はそれほど高くなく、
クレーマーのような次元の違う顧客対応は重要ですが、
BtoCという商売が、意識の低さをカバーしていました。
決して悪い意味ではなく、単に、食品安全衛生に対する最新動向、基本的な知識などが、
これまでに鍛えられる機会が少なかったから、そして、
外部から客観的に見られるという機会が少なかったからです。

しかし、飲食店も食料品製造と同様に、今後は一般消費者という顧客に
食品安全衛生の要求事項を客観的に求められる時代が来ます。

3.飲食店の新たな格付け情報

改正食品衛生法が2020年6月に施行され、本格的にHACCPが義務化されます。
まだ正式な政省令が発行されていませんが、飲食店の場合は基本的に、
公益社団法人日本食品衛生協会が作成した「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」
を参考にHACCPを実施することになります。
また、セントラルキッチンとして食品製造所を持っていて、
一つの事業所において、食品製造にかかる従事者が50人以上であれば、
「HACCPに基づく衛生管理」、つまりコーデックスHACCP12手順7原則を
組織自らが実施しなければなりません。

多くの飲食店は、前述の通り、
「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」を実施することになりますが、
訪れた飲食店が、HACCPに沿った衛生管理を実施していることや、購入する食品原材料等が
HACCPに沿った衛生管理の下で製造、加工されたことを、一般消費者はどう判断すればよいのか?
その問いに、厚生労働省は次のように答えています。

①例えば、店舗のよく見える場所に衛生管理計画(→HACCP文書のこと)の写しを掲示することで、
 各事業者の衛生管理の取組みを示す。
②また、事業者団体が自主的な取組みを表示している例もあることから、そうした例も参考にしながら、
 どのような対応が可能か検討する。

としています。
自社の管理内容を細かく記載した「衛生管理計画」を、店頭に掲示するのは望ましくはありません。
むしろ、②の事業者団体の自主的な取組みの表示=認証マークなどを掲示する方が現実的です。
一般消費者は、衛生管理計画など細かくて読みません。一見して良否を判別できるマーク、
格付けマークが必要です。

現在、飲食店のお店選びの情報源として、数多くのグルメサイトが存在します。
食べログ、ぐるなび、ホットペッパーグルメ、一休.com、トリップアドバイザー、Yelpなど、
飲食店においては、これらグルメサイトへの掲載が、売上を左右する重要な要因となっています。
サイト運営者は、サイト利用者に飲食店情報を提供する責任から、
口コミ、写真、☆の格付けなどの店舗情報に加えて、今後は衛生管理の取組み状況を掲載し、
サイト利用者の安全・安心の選択肢を提供する必要性を感じ始めています。

安全・安心情報の提供方法の一つが、先程の衛生管理の格付けマークです。
このような格付けマークが、店頭やサイト内に表示される時代が来ると想像します。
これにより、一般消費者に対して、食の安全・安心を分かりやすく、且つ、
客観的に伝える手段となります。

飲食店営業の今後は、食品製造業と同様に意識の高い顧客から評価され淘汰される時代を迎え、
否が応でも、飲食店経営者の食品安全衛生に対する意識を高くせざるを得ない時代となります。

4.消費者から選ばれる飲食店になるには

提供する料理の美味しさ、価格満足度、お店の雰囲気、映える料理であることに加え、
例えば、月1回の自主的な細菌検査を実施し、自社の食品衛生管理の状態を見える化しましょう。
組織自らの積極的取組みは、食中毒リスクを低減させ、同時に衛生管理の格付けがされれば、
HACCP義務化で「業界団体が作成した手引書」以上の取組みをすることで、差別化になります。

細菌検査は、食中毒予防の基本的な検証手段です。
日々の食品安全衛生管理の取組み成果が、細菌数という客観的な数値で評価できます。
菌数が多ければ重点的に除菌し、少ない菌数であれば、それ以上の除菌は不要であり、
費用対効果を最大限に発揮することができます。
細菌検査は、購入する食品原材料の受入検査にも使うことができ、
食品安全品質上の優良なサプライヤーを選択することもできます。

これら早急に対応することで、顧客からの高い信頼を得て、固定客の獲得に繋がります。
対応が遅れれば、その他大勢と同じ管理水準でしかなく、先行者利益は得られません。
個人経営はもとより、複数店舗を持っている飲食チェーン店は、一つの店舗で出した食中毒事件が
他店舗のブランドも毀損することに繋がります。
飲食チェーン店は特に、早急なHACCP運用、細菌検査、及びマネジメントシステムの構築、運用が望まれます。

この記事を書いた人

株式会社フィールズコンサルティング 柏原 吉晴

株式会社フィールズコンサルティング 柏原 吉晴

㈱フィールズコンサルティング 取締役(農学修士、MBA)
FSMS/ 経営支援のコンサルティング実績 300社以上
食品関連会社専門のコンサルティングファームとして、
FSMSを中心に、経営支援を行う。他にも講演や執筆活動も行う。
https://food-haccp.jp

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